
全5巻ながら作者の想いをすべて詰め込んだ傑作。
設定もしっかり練られており、終わりも成程なと感動しました。
というわけで、ネタバレ全開で感想を話します。
その日、子どもたちは世界から漂流した
漫画タイトルのEXとはエキスパートの意味。
物語の序盤だけを読むと無人島に漂着した主人公達がサバイバルに精通していくのだなと考えます。
が、実際は漂流のレベルがエキスパート、つまり規格外の漂流生活という意味でした。
主人公たちが漂着した雉島だけではなく、大量の隕石で人類の文明は崩壊。
地球そのものが漂流したというとんでもない物語だったわけです。
隕石と雉島の関係とは?
作中の隕石からは大人達の精神を崩壊させるウィルスが撒き散らされていました。
欲望を肥大化させ、ちょっとした言葉を真に受けて感情のままに動いてしまう。
痛みも消える事からゾンビのような存在として襲ってきます。
さて、この一連のパンデミックは過去にも発生したと考えられます。
その証拠が雉島の遺跡に描かれている津波と殺人の壁画です。
まさに今回と同様の出来事が過去にあった事の証明となっています。
それにしても雉島に壁画が残されていたのは何故でしょうか。
その理由は雉島の立地にあります。
今回のパンデミックは子どもには無害なのですが、子どもが狂った大人から逃げる術はありません。
人口の多い都市部では簡単に命を落としてしまうでしょう。
しかし、雉島は小さな島であり、人口も多くありません。
つまり、今回のようなパンデミックが起きても子ども達が全滅するリスクは低いのです。
狂気に抗い続けた大人達の存在
ウィルスは大人たちの精神を崩壊させます。
しかし、赤谷医師や神主、源三など死の淵まで理性を保ち続けた大人も存在します。
彼らに共通しているのは確固たる信念があったことです。
赤谷医師や神主は人の命を守り、源三は子どもたちの未来を守ろうとしました。
残念ながら作中に登場した警察のように自信を持てない大人は簡単に壊れましたが。
また、信念を傷つけられても網元のように強靭な精神を持っていれば、理性を取り戻すことも可能です。
全ての大人がダメだったわけではない事実は子ども達の生きる希望になったのは間違いありません。
繰り返されるEX漂流
本作では物語のラストに非常に味がありました。
今度は主人公たちが壁画を残して、未来の人類に伝えているのです。
前回の壁画も同様に子どもたちが残したものだったのでしょう。
このようにして地球は何度も文明の崩壊と再生を繰り返しているのです。
悲しいのは歴史から学べない大人達でしょう。どこかで歯止めをかけられれば良かったのですが。
作中でも何度かウィルスを防ぐチャンスが到来しましたが、狂った大人達に悉く踏みにじられました。
次の文明こそは・・・子ども達はそう願いながら壁画を描いたのかもしれません。
5巻の中で人間とは何かを描き切った傑作。
サバイバル好きにもヒューマンドラマ好きにも呼んでもらいたい作品です。