ここは今から倫理です1巻の感想。独特な雰囲気に酔いしれた。







一見して魅力的に感じない題材を取り入れた本作ですが、読んでみると倫理に詳しくなくとも無茶苦茶楽しめます。
独特な雰囲気な高柳先生と一癖二癖もある生徒たちの交流。
考えを押し付けるのではなく、倫理をベースにした意見を淡々と述べる様はあまりにも格好良い。
今回は記念すべき第1巻の感想を余すところなく述べていきましょう。

生徒たちの意見に真っ向から立ち向かう

1巻では様々な悩みを抱えた生徒と対峙します。

  1. 嫌われないために身体を差し出す女子生徒
  2. 周囲を馬鹿にして過ごす女子生徒
  3. 行き過ぎた正義を振りかざす男子生徒
  4. 人形に恋する女子生徒
  5. 将来の不安を隠して今を適当に生きる男子生徒

どれもが良くない生徒に映ってしまう事でしょう。
しかし、高柳先生は分け隔てなく対等に接します。

曰く、倫理が役立つ仕事は存在しない。
しかし、知ることで孤独に悩むときの道しるべになるかもしれない。

今回登場する生徒も孤独に悩んでいます。
一見して多くの人とつるんでいる生徒もいます。

しかし、心には大きな穴が開いており、満たされない。

そんな生徒たちに倫理の教えを説くことで、心を開放していきます。

何かを決意する理由は軽く見られて良いわけがない

本作ではとある女子生徒は屋上から飛び降りようとします。

周囲を馬鹿に過ごした聡明な女子生徒には訳が分かりません。
人の自殺する理由など本やネットの知識だけでは到底理解できないからです。

実際に自殺を試みる女子生徒に「そんなことで死ぬのか」と言い放ちます。

しかし、高柳先生は女子生徒の自殺を理解しました。

たとえどんな理由であっても命に換わる程の絶望になる。

これは自殺に限った話ではありません。
新型うつ病やナルコレプシー、非行。

多くの人は甘えと言い、普通の人間ならそこまで落ちぶれないと批判します。

しかし、そんなことはありません。

その人にとってはそこに至るまでの重大な理由があったのです。

気が合わない人がいる、お金が少ない、マッチングアプリで彼女ができない。

取るに足らない理由なんてない。

この言葉に救われる人は大勢いるでしょう。

軽鬱で会社を辞めた僕は実際に救われました。
これだけでも本書を読んで良かったと心から思えます。

誰もが自分の視野の限界を世界の視野の限界だと思っている。
ショーペン・ハウエル

良く生きる事とは。良い事も悪いこともしながら歩いていくこと

人形に恋する女子生徒がいました。
彼女はクラスメートに人形を傷をつけられて怒り、殴ってしまいました。

彼女は人形に恋をしていました。本人曰く対物性愛とのこと。

普通に考えると「気持ち悪い」と批判される行為でしょう。
現にクラスメートは授業中にカバンを覗き込んでいた彼女を気持ち悪いと感じました。

しかし、高柳先生はそれを知り、彼女はアレテーを手に入れていると感動しました。

アレテーは定義があいまいですが、一言で言えば良く生きる事。
また、その良く生きるというのが曖昧なのですが、本書では前に歩くことだと解釈しています。

女子生徒は人形に日々の悩みを不満を打ち明ける事で、誰かを傷つける事はしませんでした。
今回の暴力は人形を守るための行為です。

その行いは尊いものなのだと。高柳先生は考えました。
もちろん教師の立場で暴力はいけないと注意した上で、です。

人を貶め批判し、攻撃する人はよく生きてはいません。
決して、前に進めない。

そうはなってはいけない。
成功や失敗を繰り返して、必死に前を進んでいく。

大事なのは結果ではなく、前に進むという行為そのもの。

歩みを止める事こそが悪い事なのです。

自由とは何か。束縛より楽なのか。いや、そうではない。

あなたの明日の予定を教えて下さい。
デート?旅行?それか仕事でしょうか。

日本のサラリーマンの多くは仕事と答える事でしょう。

サラリーマンには自由がありません。常に時間に縛られています。
窮屈でつらい。過労死によって自殺をする人は後を絶ちません。

しかし、脱サラをしてフリーランスになっても不安は襲ってきます。
あまりにも自由過ぎるから。自由は人を不安にさせます。

決められたレールもなく、自分の責任で道を選ぶ。

僕もフリーランスとして働いていますが、ときたま強烈な不安に襲われます。

人は適度に不自由であった方が生きやすいのです。

サラリーマンに不満を抱きつつも辞めようとしないのも生きやすさを求めた結果です。

フリーランスであっても忙しくするのは自由を恐れるからです。

僕自身も平日はコワーキングスペースを借りて時間を縛っています。
そうでないと自由に押しつぶされてしまうからです。

要するに丁度良さが大事なのです。

ブラック企業に勤めて縛り過ぎるのも良くありません。
かといって、貯金を貯めまくって退職をして日々を無為に過ごすのも生きられません。

適度に縛り、適度に緩める。そんな生き方が人の理想なのでしょう。

不安は自由のめまいだ。
キルケゴール

漫画を通して倫理を学べる良書

1巻の中で考える内容の多さに驚愕しました。
作者がいかに倫理学を学び、そして、読者に分かりやすく説明しているのかを実感しましたね。

倫理は仕事に役立つことは決してありません。
しかし、孤独に悩むときに倫理は確かな助けとなるのです。

癒しや救いを求めている人はぜひ本書を読んでみて下さい。
必ず何かしらの答えを手に入れるはずです。