兇人邸の殺人【レビュー】

作品情報

作者:今村昌弘
出版:創元推理文庫

物語としての面白さ【★★★】

屍人荘シリーズ3作目。ちょっと飽きてきた。
例によって今迄の話が絡むので、順番に読むことを推奨。

今回もクローズドサークル+特殊設定の組み合わせとなります。
粗筋の範囲内で紹介していきましょう。

さながらゲームの世界

兇人邸に侵入した葉村一行に襲い掛かる首切り殺人鬼!なんとかして生き延びろ!
これあれっすわ。クロックタワーですわ。

首切り殺人鬼がマジで強いので、編成した傭兵部隊が成すすべもなく敗北します。
逃げるしか手がなく、一同は絶望の籠城戦を開始するのでした。

インパクトは1作目より大きい。推理小説のワクワクとはまるで違うけど、楽しかった。

別の殺人者も登場し、さらなる絶望が襲う

首切り殺人鬼は日中は動けないので、昼間のうちに対策をすることになります。
が、そこで浮上した新たな殺人者。

明らかに首切り殺人鬼の手ではない死体。いったい誰が。
お互いが疑心暗鬼となり、思惑も異なる。問題がどんどん積み重なっていくのです。

名探偵コナン好きにはぴったり

推理そのものより「首切り殺人鬼への対策」が楽しい本作。
アクション全振りの名探偵コナンばりのワクワク感があります。

一方でこれが推理小説かと言われると若干の疑問は残る。
いや、しっかり推理してるんですけどね。アクションに全力投球しすぎて。

今迄の2作品とはかなり毛色が違いました。

事件の複雑さや解決時の爽快感【★★☆】

しっかり事件なので、そこは安心してほしい。
が、何度も言うように推理はオマケ感があります。

なんというか読者が推理に集中できないというか。
アクション全振りの上、葉村君以外そんなに事件の究明に興味が無いんですよね。

また、過去回想にかなりのページを割いてるので、推理の密度が薄い。
読み物としては間違いなく面白いけど、推理小説を期待するとガッカリするかもしれない。

結末の読後感【★☆☆】

ここで終わるんかい!

シリーズ作品の悪いところが出てる。次回に続く引きで唐突に終わる。
漫画はともかく小説はしっかり終わってほしいんですけどねぇ。

エピローグがないので、余韻を味わうことはできません。

まとめ

間違いなく面白い。
ただ、推理小説として観ると若干の不満は残る。